ボーエ モーエンセンによりデザインされたイージーチェア、model.2256。
少し離れたところからじぃっと見てみると、要所にはスパニッシュチェアのシルエットを彷彿とさせる、シンプルかつ凛とした雰囲気がにじむ姿がなんともモーエンセンらしい一脚。
なのですが、それに加えて感じるのが日本的な直線美。
アームの接合などディティール面の印象にとどまらず、まるで伝統的な日本建築の要素をチェアにしたかのような、一言では表現のままならない深みを秘めています。
床ずりと呼ばれる前後の脚が繋がった構造は、チェアとユーザーの荷重を点ではなく面で分散してくれるため畳の上でもダメージを与えずに使えるという実用的利点も持っており、またそのライン構成からより低く構えたような印象を感じさせてくれます。
デザインからくる印象はもとより、座った際の不思議な心地よさも、冷静にこのチェアと向き合うと見えてくる。
それは、多くのソファと比べて低いアイポイントからきているようで、畳をはじめとした床と長らくじかに触れ合い、そこで暮らしてきた日本人だからこそ感じる心地よさ。
自邸には提灯を吊るほど日本の文化に関心を寄せていたモーエンセンが、そこを意識してデザインしたかは果たして定かではないけれども、結果として僕たちがこのチェアの心地よさを存分に感じられるという事実だけで十分ではないでしょうか。(2309075)