フィンユールと聞けば誰もが聞いたことのある巨匠ですが、このブワナという言葉には聞き馴染みのない方も多いのではないでしょうか。
フィンユールのデザインした椅子の中でも名作中の名作、「チーフテンチェア」
その量産モデルとしてFrance & Son社より販売されたのが、このブワナチェア=Bwana chair です。
ブワナ(Bwana)とはスワヒリ語で「主人」「貴族」などの意味があり、チーフテンが首長の意味を乗せていることを知っている人からすれば、この名前もすんなりと納得です。
このいかにも偉い人がゆったりと座る様を想像できる貫禄と存在感は、そんな背景を知らない方でも十分に特別な椅子だと感じ取れる風格。
このブワナチェアが誕生したのは1953年ごろのおはなし。
彼はこの頃、デンマークに留まらずデザイン活動を世界中に活発に広げていた時代。名称にスワヒリ語を活用するあたりも、当時の時代背景が関係しているのでしょうか。
先ほどお伝えした「チーフテンチェアの量産モデルとして作られた椅子」という点。
1949年にチーフテンチェアが発表され、その約4年後に誕生したこのブワナチェア。
チーフテンチェアの要素を取り入れつつ、よりコンパクトに仕上げたということですが、彼のこだわりがこのデザインにも充分に詰まっており、職人技も光る細かなディテールたっぷりの作品に、果たして量産モデルの概念とは? と感じてしまうほどの手の入れようです。
まず見た目に入るアーム先端のハンドグリップ。丸いころんとした可愛らしいデザインである一方、フレームは直角に交わるデザインでスマートな印象。相反する2つの融合にフィンユール哲学が見て取れます。
ころんとしたグリップ部分は手の中におさまりやすく、ここに座れば自然と誰でも握ってしまうであろう印象的なパーツです。
フレームの太さも太すぎず、座面の接合部に空間をつくることで見た目の浮遊感を演出。これも彼のデザイン力の戯れ物。ヘッドレスト裏に横にわたっている笠木部分にはフィンガージョイントが採用されており、接合部の美しさに抜かりのない点は家具好きのツボを刺激してくれます。
ゆったりとした座面と、体を支える絶妙な角度の背もたれは、まるで上質なラウンジチェアに座っているかのような贅沢な座り心地。特にクッションは、厚みをもって作られているので長時間座っていても疲れにくい。
フィン・ユールの家具は昔も今も単なる椅子ではなく、空間そのものを引き立てる存在です。今回、張地は上質な本革レザーにて新たに張り替えを行いました。手作業で仕上げられた張地の縫製も、職人技のひとつとしてクラシカルな空間にもモダンな空間にも自然と溶け込みます。
時代を超え長く愛されるチェアとして受け継がれていくであろうこの椅子の価値は、この椅子に座る時間としてあなたに積み重なっていくはずです。
生地:本革(ブラックレザー)
現在、
haluta karuizawa instock showroom にて展示または保管中です。